癌は身体の細胞の一部が異常分裂をおこして次々と増殖する病気で、
癌が体内に発生すると、腫瘍マーカーという特殊な物質が現れます。
腫瘍マーカーとは、癌細胞によって血液中に出された特殊なたんぱく、酵素、ホルモンのことで、現在、すでに数多くの腫瘍マーカーが発見され、がん診断のためのスクリーニングに用いられていて、癌治療後の経過観察などにも腫瘍マーカーは利用されます。
CEA(癌胎児性抗原)は、本来胎児で作られるタンパクですが、大腸がん、胃がん、膵がん、胆のうがんの人の血液中に多くみられます。
CEAは、これらの癌のスクリーニング検査に用いられます。
RIA二抗体法: 5.0 ng/ml 以下
RIA固相法: 2.5 ng/ml 以下
大腸がん、肺がん、胆管がん、膵がん、胃がん、甲状腺がん
CEAが高値というだけではどの部位の癌か特定できません。
消化器系を中心に、別の検査を受ける必要があります。
SCC(扁平上皮癌抗原)は、扁平上皮癌を調べる検査ですが、特に子宮頸部癌、肺がんで高い陽性率を示します。
1.5 ng/ml 以下
子宮頸部癌、肺がん、皮膚がん、食道がん
肺の扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてはシフラの方が陽性率がやや高いです。
膵がんや胆管がんなどの癌で高値になります。
CA19-9(糖鎖抗原19-9)は、それらの癌の発見のほか、癌の経過観察、手術後の再発防止チェックなどに使われています。
膵がん、胆管がん、胆のうがん
10歳代〜20歳代の女性は、平均より高値になりますが、40歳以上になると、性別・年齢による数値の変動はありません。胆石による閉塞性黄疸でも一過性に高値となることがあります。
TPA(組織ポリペプタイド抗原)は、ほとんどの臓器癌で特殊なタンパクで、
そのため、スクリーニングや経過観察などに用いられます。
癌のほか、胃潰瘍、肝炎など、腫瘍以外の様々な病気でも高値を示します。
RIA法: 125 U/リットル 以下
胃癌、膵がん、乳がん、肝がん、膀胱がん、胃潰瘍、肝炎、肝硬変
TPAだけでは、癌かそれ以外の病気かの区別がつかないので、他の腫瘍マーカーや血液検査と組み合わせて検査します。
AFP(α-フェトプロテイン)は、α-胎児性たんぱくで、元来は妊娠早期の胎児にみられる血清で、肝がんになった際は増加する腫瘍マーカーです。
肝がんの早期発見、経過観察などに利用され、また、肝炎、肝硬変、妊娠などでも測定値が一過性に上がります。
肝がん、肝炎、肝硬変
肝硬変の人で、α-フェトプロテインが、100〜500ng/mlの人は、肝がんにかかる可能性が極めて高くなります。α-フェトプロテイン、超音波の検査を月1回程度で継続して行った方がよいでしょう。
最近では、AFPのレクチン分画が測定できるようになり、V分画(AFPL3)が多ければ、肝がんの疑いがあります。
PIVKA-U(ビタミンK欠乏により生じる異常凝固系タンパク)は、肝臓の病気やビタミンKの欠乏時に血液中に出てくるタンパクで、とくに肝がんで異常な高値を示します。
0.1 AU/ml 以下
(高感度法: 40 AU/ml 以下)
肝がん、ビタミンK欠乏
肝臓系腫瘍のスクリーニング検査に用いられるほか、放射線療法、化学療法の経過を見るのにも利用されます。
PAP(前立腺性酸性ホスファターゼ)は、前リ腺癌の診断、経過観察には欠かせません。
特に50歳代以上の男性の前立腺がんスクリーニング検査に役立ちます。
RIA法: 3.0 mg/ml 以下
前立腺ガン、前立腺肥大
癌の疑いがある場合は、X線検査や内視鏡検査などにより、病気の診断を行います。
前立腺ガンの腫瘍マーカーには、ほかにPA(前立腺抗原)、α-セミノプティンがあります。